お隣の席は一人旅
私たちのキャビアの宴もたけなわ、奥の座席には一人旅風の若い男性が座っていました。せっかくなのでご一緒にいかがですかとキャビアをのせたクラッカーを手渡すと、ぱくっと口に入れて、「キャビア初めてです」と少し嬉しそうな感じを見せました。それまではずっと黙ったまま、しかもひとりだったので何か声を掛けるにもどうして良いのか分からなかったのです。そして、それを切っ掛けに少しずつお話しするようになりました。 やはり一番目の話題が訪問する国はドコなのかという事、次に一人旅の事とつづきます。男性は大学の春休みを利用しての旅行だったそうです。行き先はイギリスのロンドンという事です。ロンドンへはローマで再び乗り換えをするため、ローマで1泊しなくてはならないと言っていました。 私はロンドンに何の魅力を持って旅するのかとても興味がわいたので聞いてみると、本当は友達と二人旅で、友達がロンドンに行きたかったからという事です。友達はと言うと、急用が出来ていく事が出来なくなったそうなのです。なんと不運な人でしょうか、ギリギリになって行けなくなった本人であればキャンセル料が発生しても仕方のない事ですが、準備万端整えて更にキャンセル料はお金を捨てるようなものなので一人旅になったのでしょう。でも、彼の行きたかったのはロンドンではなかったというのが更にかわいそうなところです。それを聞いてやっと、飛行機に乗ってからずっと暗い感じで座っていたのだとわかりました。はじめての海外旅行で不安な上、しかも自分が選んだ地でもないロンドン、頼りにしていた友達は来れず、私だったら一緒にキャンセルしてしまったかもしれないと思いました。 飛行機は夜遅くローマ空港に到着しました。別れ際に彼は、出来るならローマで滞在したいくらいだけど、ロンドンの宿泊を全て取ってしまっているからと言いました。私はどの国でも日本と違う何かがいっぱいあって、楽しい何かが見つかると思うから、頑張って旅して来るように言葉をかけて別れました。